2023年、この一枚!(その4)ドレスコーズ / 式日散花
続けて更新。これにてラストです。「この一枚!」と銘打って4枚目。
ラストは今年リリースの新譜です。
むちゃくちゃ聞いたし、これからも聞き続ける。何らかの事情で夜逃げする際には共に連れていきたい一枚(現実的にはipod classicと充電器を持って行くと思うがw)
【LP】ドレスコーズ / 式日散花(キングレコード/EVIL LINE NAS-2126) '23年
先に書いておくと、これ、先にCD(ボーナストラック付き)を買ったんですけれども、CD予約開始時にアナログ盤リリースの情報が出ておらず、後出しで「アナログ盤リリース決定!」みたいな展開でした。しかもその時点でCD発売直前、予約キャンセル不可という……。こういう商法(?)、なんとかならんのかな……。
で、購入したCDをitunesに取り込み、付属のDVDを数回だけ見て速攻で売りに出しましたw
そしてあらためてアナログ盤を予約して、後日とどいたのがこちらです。
とはいえ、けれどもしかし、内容は申し分なし。あまりにも素晴らしすぎて、というかメロディ、アレンジ、歌詞、どれをとっても自分に響きすぎて、ひたすらヘヴィロテしています。
というわけで、長くなりますが、全曲感想スタートです。
下に全曲リンク貼ってますが、とりあえず全曲試聴トレイラーを。
以下、めっちゃ長いです(3,300字強)
1.ラブ、アゲイン
イントロ無しで歌い出す小気味の良いロックンロールナンバー。キャッチーで、ひたすら切ないメロディと歌詞。
英雄では なくても
ともだちとしてでは なくても
もう 朝がこなくても
すべて まぼろしでも
なぜ、志磨遼平はわたしの人生のワンシーンを知っているんだ?という気にさせる歌。切ない、最高。
2.少年セゾン
アルバムの先行曲としてMVも発表されていた曲。
昔のソウル/R&Bみたいなビートのポップソングで、全体的にエコーのかかったサウンドも特徴的。エコー感はこのアルバム全体に漂ってるんだけど、この曲は特に。
日傘まわす ぼく退屈
というくだりは"夏なんです"(はっぴいえんど)インスパイアだそうで、こちらは明るい曲調なんだけど歌詞の内容は、哀愁とエロスがうっすらと漂うような。エロスを感じるのはMVのせいもあるのかも。
ロケーション的に「死」を連想させる内容……。亡くなった少女が真夏(お盆)に犬に会いに戻ってきたのか、はたまたその逆なのか。
3.若葉のころ
冒頭二曲に続きアップテンポなナンバー。
はじめにきみを 名づけたのは
パパやママでも ないよ
-
かえろう マリ
かえろう マリ
ぼくとおなじとこへ はやく
といった歌詞から『人でなしの恋』のようなものを想起させつつ、先の曲のMVとの関連で、もの言わぬペットとの別れ(死別)を歌ったものとも考えられるか。
かえろう マリ
かえろう マリ
どうして なにもいわないの
という締めからも死別を連想させる。切ない。曲調はポップなのに。
そういや、ビージーズにも同名の曲があるけど……あんまり関係ない…こともないのか。
4.襲撃
本アルバムの問題作、というか衝撃作。
これもまた先行で配信されてたMVがあった作品、いわゆる先行MV三部作のラストです。
このMV、本作6曲目"最低なともだち"の後日譚のような内容なので、それを見た前提で書きますが。
まず、白いシャツの重喜(大東駿介)は果たしてどちらの少年なのか?あの日、部室でキスをした方?された方?
そして黒と赤のドレスコーズ(志磨遼平)はあの日の少年に憑りついた死神?それとも体を乗っ取った存在?
そもそもこの海辺の舞台は彼岸?此岸?
考えれば考えるほど分からない。どちらとも受け取れるので結論が出ない。でもよく分からんから、それがまたいいのかもしれない。でも、絶望という一言で片づけるのは違うと思うんよな、MVを最後まで見ると。
みんなの解釈を教えてよ。
MV中でドレスコーズが灯す線香花火はあの日の部室("最低なともだち"のMV)の花火、そしてそれが少しずつ大きな花火に持ち替えられていくのは過ぎ去った年月を暗示しているのかなと。最後の大きな花火が折れ曲がっているのは関係が壊れてしまったことを示していて、それを投げ捨てた瞬間に二分割画面の重喜とドレスコーズがシンクロする。歌詞ともシンクロしている。とにかく演出が素晴らしい。
5.メルシー、メルシー
欧州ジャズのような曲調でクールダウン。わたしの筆(キーボードタッチ)もクールダウン。
志磨遼平のフレンチ魂が炸裂した静かな曲。ええ曲や。
LPではここでA面終了、よき余韻が味わえます。
本作の中でもかなり好きな曲なので、秋のツアーでセットリストから外れてたのは残念だったな。12月の恵比寿ではこの曲と"さよなら、ベイビー・ブルー"(毛皮のマリーズ)が続けて披露されたそうで、うおぉー!w
見たかったー!
さて、ここで一息、席を立ってターンテーブルに向かい、LPをひっくり返しましょう。
6.最低なともだち
ここからB面。先に書いた"襲撃"の前日譚、少年の日の思い出……。
不穏な響きのシンセが印象的な曲で、先行MV三部作の第一弾。
曲の途中で死神(?)に扮した志磨遼平がフレームインしてくる瞬間が何回見てもぞくぞくする。カウントダウンするかのように指を立て、ともだちとしての関係の終焉を告げに来たのか、それとも死期を告げに来たのか……。
MVのラストの花びらが切なく、不穏。
途中で出てくる線香花火など、続編の"襲撃"に繋がるヒントもあったりして。
7.在東京少年
ここでぐっと'80年代シンセファンクっぽい曲調に。完全にロキシー・ミュージックの"Same Old Scene"ですよね……(小声) いや、しかし超クール!
'80年代に想像していた近未来への憧れ(NEO TOKYO的な)のようなものを歌い、でも2023年の現実はそうでもなかった…サヨナラ……みたいな歌なのかな。これもまたある意味で別れの歌なのかもしれない。
ちなみに(小声)
8.罪罪
優しい曲調で、何かを失った二人を優しく見守るような切ない歌詞の曲。
アルバムの流れ的に"最低なともだち"と"襲撃"の二人を思わせて、より切ない。歌詞をよく読めばこの世から消えていこうとする二人ともとれるわけで……。
あのよろこび あのかなしみ
それすらも すべては夢でした
まもなく 鐘がなる お別れの
-
祈りの果てが ここなら
ぼくらはけだかく おちて行こうか
光おとずれぬ 春の日
切ない、ハーモニカの音色も切なさに拍車をかけている。
アウトロが"ラバーズ・コンチェルト"っぽいのもまた印象的というか、象徴的。
9.式日
ピアノで始まる静かな曲でアルバムの〆。ギターソロとアウトロのギターが咽び泣いていてむちゃくちゃ良い。
はじめての 別れ
いつか こんな 別れにも
ならされてゆくなら
今日が ぼくの
はじめての 式日
この歌詞で締められるアルバム、志磨遼平のインタビューで次のように言われていて、なるほどなとストンと腑に落ちた。
初めて身近な人の死を体験し、今までに味わったことのない感情が起点となったアルバム『式日散花』。
なるほど。
秋のツアーで本編最後にこの曲を披露し、アウトロで花びら(紙吹雪)をステージに散らせていた志磨遼平が印象的だったな。
これにて終了。いいアルバムや……。これがわたしの『式日散花』の感想、あるいは解釈だ。
オマケ
CD版BONUS TRACK.ドレミ
映画『零落』の主題歌。歌詞の言葉遊びが面白い、けれどMV含めてむちゃくちゃ退廃的。緩くうねるベースラインが"Don't Let Me Down"(ビートルズ)っぽいと思ったら……。
非常に個人的な話なのですが、冒頭に登場する猫のような目をしたショートカットの風俗嬢役の女性(趣里)がむちゃくちゃタイプで、これは危険だ……と思って映画は見に行きませんでしたw しかしMV冒頭のセリフ、刺さるわ。
長々と書きましたが、これで終了。2023年後半はこのアルバムの曲群の断片を常に脳内で再生していたような気がします。
ここまで夢中になれるバンドがあらたにできたことは実にありがたいというか、素晴らしいことだなと改めて実感した2023年でした。ライヴも見に行けたし、また今後も通いたいしね。
それでは、よいお年を^^
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